ウィルソン病概要
日本において出生3万~4万人に1人の割合で発症する遺伝性(先天性)銅代謝異常症である。
日常生活において摂取されるCu(銅)が、正常に肝臓から胆汁中に排泄されず、肝臓・腎臓・脳・眼などに多量に蓄積し、様々な障害を起こすと考えられています。多量に蓄積したCu(銅)により、小児期に重い肝障害(肝炎・肝硬変)を起こしたり、震えやうまくしゃべれなくなるなどの様々な神経症状や精神症状を起こす重篤な病気である。 小児期の慢性肝疾患としては最も頻度が高い病気である。
治療として、食事療法や銅の蓄積を防ぐための薬の内服を生涯続ける必要があある。早期に診断され、適切な治療を続けた場合は普通の生活を送ることができるが、治療の中断は命に関わることがある。
ウィルソン病という病名は、1912年にウィルソン博士が初めて報告したため、博士の名前をとって名付けられた。

ウィルソン病の診断基準
A.症状
- カイザー・フライシャー(Kayser-Fleisher)角膜輪 2点
- 精神神経症状 軽症 1点、重症 2点
(参考)軽症:軽度の手指の振戦やうつ症状等重症:日常生活に支障をきたすような歩行障害、構音障害、流涎や統合失調症様の精神症状等
B.検査所見
- 血清セルロプラスミン 10mg/dL未満 2点、10以上20mg/dL未満 1点
- クームス陰性溶血性貧血 1点
- 尿中銅排泄量 40以上80µg/日未満 1点、80µg/日以上 2点
- 肝銅含量 50µg/g乾肝重量以上250µg/g乾肝重量未満 1点、250µg/g乾肝重量以上 2点肝銅含量を測っていない場合、肝生検組織で銅染色 陽性1点
- 精神神経症状がない場合に頭部MRIで銅沈着の所見 1点
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
肝疾患としては慢性ウイルス性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝疾患、薬物性肝疾患、自己免疫性肝疾患、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、ヘモクロマトーシス、α1-アンチトリプシン欠乏症等を鑑別する。
神経疾患としては不随意運動、姿勢異常やけいれんを呈する疾患を鑑別する。
精神疾患としてはうつ症状、不安神経症、双極性障害、妄想性障害、統合失調症、ヒステリーの症状を呈する疾患を鑑別する。
D.遺伝学的検査
ATP7B遺伝子の変異 1つの染色体 1点、両方の染色体 4点
<診断のカテゴリー>Definite:上記の点数の合計が4以上Possible:上記の点数の合計が3以上